今回の騒動は、感染症という近代医学の祖とも言うべき疾患の基本が問われています。科学を取り入れた近代医学のレベルが問われているということと大差がないかもしれません。一体感染症とは何なのか、病原体とは何なのかということを科学的に明らかにしたのは、ドイツのロベルト・コッホです。彼が感染症の病原体同定の基本的な考え方として、コッホの4原則という法則を残しています。これについて、科学とは何かという考え方に当てはめて考えてみます。コッホの4原則の中で、1番目の項目は、自然観察に相当しますl。2-4番目は、実験に相当します。自然観察により仮説を立てて、これが病原体候補であるという仮説を、実証実験により確かめるわけです。コッホの4原則を満たすことを確認することによって、科学とは何かというサイクルが完結するわけです。このように、コッホの4原則は、感染症の考え方に科学の視点を取り入れて、その具体的な手順を示したものと言えるわけです。
コッホの4原則の第一項である「一定の患者に一定の微生物が存在する」というのはウイルスの増殖と関係して症状が現れるということに相当します。これは、自然観察です。2-4番目は、ウイルスを用いた感染実験です。病原体がこのウイルスであるという仮説のもとに、実際に実験によって確かめるわけです。今回の感染症に関しては、コッホの4原則の第一項「一定の患者に一定の微生物が存在する」すなわち、ウイルスの増殖と関係して症状が現れるという事象も、明らかな形で証明した論文が見当たりません。2-4番目に関しては、動物実験で同じウイルスが動物から確認できたというものが見当たりません。このように今回の騒動で問題となっているウイルスは、コッホ原則の4つがすべてを満たすというレベルでなく、第一項ですら満足に満たす科学論文が存在しないのです。
このようなことから、少なくとも現時点では、このウイルスが病原体になるということが明らかにされていないと考えられるのです。無症状者が感染源になるという論文の問題点が、このことからも指摘できるわけです。科学とは何かというスタートラインである自然観察が、症状の発現と病原体の増殖が関連するということに注目するべきです。これが明らかにされない以上、無症状者が感染源になるという話は成立しないのです。
コッホの4原則を考え直す
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