PCR検査の特色として、特異性が高く、偽陽性率は1%程度という誤解があるようです。PCRとしては、特異性99%ということはあり得るのですが、これを臨床検査に用いるとまったく事情が違ってきます。
これは、対象とする検体の中にどのくらいの類似した遺伝子があるかがわからないこと、そそして遺伝子はひとりひとり違うこと、目的とするウイルス遺伝子が存在するかが不明なことなどの要因が関係してきます。少し考えればわかることですが、偽陽性率の計算はまったく不可能です。
問題とするウイルスがその環境中に存在する場合にはCt値が高いと偽陽性率が高まることは予測できます。したがってCt値を30以下にすることは、偽陽性率を下げる効果が期待できます。
しかし、問題とするウイルスがその環境中に存在しない場合は、常に偽陽性率100%です。したがって、問題とするウイルスがその環境中に存在するかどうかが非常に重要です。
とりあえずの対策としてはCt値を30程度にまで下げることは、有効であると考えられますが、その場合下げる理由が合理的に説明できるかという問題があります。それ以前の検査はどのように考えればよいかということを合わせて、合理的な説明が出来るかということです。公的な立場から、これまでの検査は不適切であったという説明が可能かという問題が出てくるのです。